カヤの平高原の今後の課題

1.道路、周辺施設整備に伴う変化
a.客層の変化(一般観光地化)
 
これまでカヤの平高原は『マニアック』な人にしか知られていない『穴場』だった
のですが、いろいろ整備が整ってくるにつれ、気軽に、簡単に入山できるようになり、
ごく一般の人に知名度も話題も広まりつつあります。
中でも一番気付くことは、観光バスの乗り入れが増え、そのバスから降りて来るお客
さんを見ていると、その雰囲気は過去のカヤの平高原には無かったものです。
「お土産屋さんやレストランはないのですか?」
どうやらバスから降りて来られるお客さんにはここは一般の行楽地のイメージのと同
じ印象でしかないようです。
 *ここカヤの平高原の非常に高価値のブナの森が、道路整備により簡単に入れる
  ようになったことで一般の人に親しまれやすくなったことはとてもいいことな
  のですが、安易に奥山に入れるようになることのデメリットをしっかり考えて
  いかなければなりません。
.ゴミの問題(人間のゴミで野生動物の生態に大きな変化が見え始めてます。)
.山野草・昆虫・魚類の乱獲(監視が甘いために、最近近県から集中攻撃に)
。.遭難・交通事故 


b.快適になった施設に苦情
 
カヤの平高原ロッヂ、キャンプ場トイレ、シャワールームいずれも以前の施設から
すると比較にならない程に快適になったはずなのですが、しかしなぜか苦情が多くなっ
てます。おそらくお客さんの感覚の中では、ここはかなり自然度の高い特殊な場所で
あるという感覚がなくなってきているからだと思います。人間にとっての快適は、自
然の生き物に対してはダメージを与えていることが多いのです。より快適な施設、設
備に囲まれると、人は、「私が今このカヤの平高原にいることは、ほんとに貴重な大
自然の中にいるのだ」ということを忘れさせられ、更に快適さを求めて贅沢に我がま
まになってしまっているようです。多少の不便、不自由、不快さの中にこそ本来のカ
ヤの平高原の大自然を味わう醍醐味があるのですが、自然を求めて来ていながら、こ
この生き物たちとどんどんかけ離れてしまっています。

 

2. 施設についての問題
a. 牧場のオートキャンプ場
 ここ10年くらいなんとなく続けてられてすっかり定着してまっている道路脇の牧
草地上のオートキャンプですが、正式に幕営地として許可を得ていないキャンプ場と
してこれ以上続けることは、カヤの平高原が一般化している波にあって、もしも事故
や問題があった場合に、必ず管理運営している自治体の責任が大きく問われてくるこ
とになります。お客さんには区画の無い自由でのびのびしたオートキャンプ場として
すこぶる高評を得ているのですが、もしもトラブルが起きた場合のことを考えると心
配です。それと、道路脇がキャンプ地ということで非常に管理がしづらく、受付せず
に勝手にテントを張って料金を払わずに帰ってしまう人等をしっかりチェックするこ
とは、お盆のにぎわっているころなどでは不可能です。お客さんの誠意で成り立って
きたこの牧場キャンプ場は、カヤの平高原が更に更に一般化していくことを考えると、
あらゆる面でこれ以上続けることはできないと思います。
 私は、この牧場キャンプ場は来シーズンから廃止してキャンプ場は本来のキャンプ
サイトでの持ち込みテント、貸し(常設)テントのみ、オートキャンプ場は一切なし
というかたちにもっていき、本来のキャンプサイトを整備して大形テントを列ねて張
れるような大きなスペースを少し増やしたらいいと思います。
 今まで牧場キャンプ場を利用いただいていた多くのお客さんからは当然『残念!』
の声が聞こえて来て、『それならもうカヤの平高原でのキャンプを止そう』とする常
連さんも出てくるかもしれません。しかし、カヤの平高原のほんとうの魅力を知って
いる人たちには、
『多少の不自由を伴うことになってもまた絶対ここに訪れます。』
といっていただいています。

★利用料金の見直し
 牧場キャンプ場の廃止に伴って、今まで いただいていた"オートキャンプ料金"が
入らなくなります。その減収分は新しく "駐車料金" をいただくことで補うことにす
ればいいと思います。上高地とかでは早くから山中の駐車場できちんと料金が取ら
れていることが知られているので "駐車料金" という名目ならば納得して支払っても
らえると思います。
 入山料(施設使用料)については、現状の値段では他のキャンプ場と比較すると
格段に安いです。カヤの平高原はそのほとんどが国有林であって、しかも自然休養
林に指定されている区域です。みんなの税金で維持されている所で、入山料金は公
共料金的な感じもあり、本来利用者の負担は少なくて当然と考えられるのですが、
今後は 、利用した "受益者" にしっかり負担をしていただくような方向にしていか
ないと、施設の維持管理は大変に難しくなると思います。多少の入山料の値上げは
必要だと思います。
 新しく設けられた水洗トイレについては、シーズン中のメンテナンス費用から、
トイレットペーパー代等の維持費が以前のトイレとは比較にならないくらいかかり
ます。あちこちの山で任意の有料トイレがでてきているように、来シーズンからこ
このトイレも任意有料化をして、トイレ入り口に料金箱を設置するようにしたらど
うかと思います。


3.カヤの平高原の今後の方向
   『今後、カヤの平高原は            
          どんな方向に進むのがよいのだろうか?』

 
ここの管理元である中部森林管理局等の政府系機関の基本的な理念だけで維持
管理していた今までの方法では、もはや無理です。最も身近に係わり続けて整備
にも大金をかけてきた地元の自治体もその周辺の自治体もいっしょになって考え
ないとここの自然財産は維持できなくなってきていると思います。それと最近で
は、一般の人々の間に芽生えてきた非営利団体が既に2つもカヤの平高原に係わ
ってきています。今までここにずっと係わってきた団体や組織、新しく係わって
きた団体、またここを訪れる人たちみんなの意見をまとめて方向付けていかない
とならなくなってきました。さしあたって一番係わりの深い地元の木島平村がリ
ーダーシップを執って話し合いの場を作ったりアンケートをしたりする必要があ
ると思います。それ以前に木島平村としてのカヤの平高原に対する理念と方向を
しっかりまとめなくてはなりません。

 
a. 日本の環境・自然教育の中心地に
 何の施策もなく、何もしなかったことがカヤの平高原が今こうして自然豊かに残
された理由になるかもしれませんが、今後に及んではそれはもう通用しないでしょ
う。さまざまな考えを持つ人間がたくさん係わってきているからです。それぞれに
個人的にもまた組織としても欲望が複雑に絡んできていますから話しをまとめるこ
とは至難になってきました。
 
 『カヤの平高原を日本の環境・自然教育の中心地に』
 という方向を私は提案します。
 カヤの平高原には 『信州大学教育学部付属ブナ原生林教育園』 があり、戦後
信州大学がここを中心に勢力的に自然生態研究を続けてきた歴史と実績があります。
私も木島平村の人々もここで調査研究したたくさんの研究者からいろんな面で啓蒙
されたり深く考えさせられたりして、学んできています。それらの積み重ねからこ
こは、未来を生きる子どもたちのための環境・自然教育の場として日本一適してい
る場所に成り得ると思うのです。
 この夏に開催された『ブナの森自然劇場』のテーマそのもので、
 『ブナの森のほんとうの自然を子どもたちに体感し実感してもらう』
 場所であり、そのすばらしさをまた次ぎの世代にしっかり継承してもらうために
 みんなで話しあったり教えあったりして、生き生きしたこのブナの森とその周辺
 環境を守っていくための拠点とする方向が一番いいと思います。